K・SWJ通信 NO.2 2018.7.23
「天の理法を体に移す」=「合氣道の技の三段階理論」 塾長 藤谷
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◆K・SWJ通信 No.1を読んだ、(昔、空手をやっていた友人の)剛ちゃんからの第一のメールです。
合気道も奥が深いようですね。
難しいですが 相手を無力化することや 倒す(圧倒することかな?)は同時並列的に瞬時に行うのでしょうかね。
その上で 相手を制御することになるのでしょうか。
圧倒して無力化するのかな。
すべてが有機的に繋がっているのか。
判りません
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◆私からのご返事のメールです。
K・SWJ通信 No.1で、「天の理法を体に移す」という”合氣道の精神”の言葉は、「合氣道の技の三段階理論」と捉えるべきである、という話をしましたが、この点を少し具体的に説明すると、ご質問に対する回答になると思います。
第1段階の「ゼロ化」の技が最も合気道の核心的技なのですが、もう少し敷衍すると、「相手方からの物理的攻撃力の物理的衝撃が自分に及ばない(ゼロになる)ように、体の捌きと膝と手足を使う技」です。
第2段階が「崩す」技で、「ゼロになっている、あるいは惰性で踏鞴を踏んでいるような状態(マイナスになっている)の相手方の垂直方向水平方向の不安定的状態を、体の捌きと膝と手足の動作で、自己コントロール出来ない状態に陥れる技」です。
第3段階は、「コントロールする技」で、「自己コントロール出来ない状態に陥っている相手(それでも、隙あらば、刃向い抵抗しようという意思を持っている)を、体の捌きと膝と手足の動作で、投げたり、抑え固めたりして、抵抗できない状態にする技」です。
ですから、言ってみれば、3つの技を段階的にプロセスとして行うのであって、「同時並列的に」行うものではありません。
また「瞬時に」行うものでもありません。
達人は、この3つの技を短時間で、目にも止まらぬ速さで行うこともありますが、多数の人は、第3段階の技だけを見て、そこが目的地点だと思って、第1段階の技や第2段階の技に、注意を払わずに、そして、それを技とは認識せずに、端折ってしまって、必要な動作も行わず、焦って、早く第3段階のみの所作を行おうとしています。
しかし、これでは、合氣道が他の武道と決定的に異なる「合気道の精神(WHY・WHAT・HOW)に基づいた技である」こと、そして、その最も中核的な技が、第1段階のゼロ化の技であることを理解していない、と言わざるを得ません。
勿論、多くの鍛錬修練を経て、結果として、”合気道の精神”に合致する素晴らしい技を身に付けた方々を私は多数知っていますし、多大なる尊敬をしています。
が、限られた時間の中で、合氣道の神髄に触れたい、と考えるならば、私の様な理解を参考にされては如何でしょうか。
また「相手を無力化する」のではありません。ゼロに導くだけです。
さらに「相手を倒す」のでもありません。攻撃出来ない状態にコントロールして、攻撃を諦めさせるだけです。
また「圧倒」もしません。相手方に対しては、争いは止めましょうよ、という和やかな気持ちを以って接するだけです。
またコントロールというと「制御」と訳されそうですが、「争いのない状態に和やかに導いていく」というふうに考えています。
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◆私からの回答に対する、剛ちゃんからの更なるメール
「難しいですね
かわして
かわせ無いようにして
押さえる(止める)
実際を見ていないのでこんな程度しか理解できません。」
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◆剛ちゃんの第2のメールに対する私の回答
第1段階のゼロ化の技について、「躱す」というのは、当たらずと言えど遠からずの表現です。敢えて躱すと使うなら「消極的に逃げて躱す」のではなく、「積極的に相手の正中線に、自分の正中線を切り結ぶように躱す」ということです。
更に、「躱せない様にして」というのは、違います。こちら側は、攻撃はしていないので、相手は、そもそも躱す、逃げるという気持ちにはなり様がありません。
万が一、逃げようとするならば、こちらは、追いかけるつもりはありません。攻撃をしてこない相手に対して、攻撃を仕掛けるのは、合気道ではありません。その段階で、こちらは技を止めるべきです。
「躱せない様にして」が、第2の崩す技、そして第3のコントロールする技の流れの中における相手の状態を言うのならば、これも当たらずと言えども遠からず、です。
私はこの状態の時の感覚として、「相手方を自家薬籠中のものとする」という表現が適切だと思います。
相手方の刃向い、抵抗する力を強く感じた時には、その力に対して、それを圧倒しようとするのではなく、一度コントロールの技を弛めて、相手方の抵抗力を吸収して、更に二度目のゼロ化と崩しの技を行います。
稽古の中で、何度も相手方に刃向かって貰い、2度目、3度目のゼロ化、崩しを繰り返す事(練り合い、と言います)も、合気道の精神に基づく合気道の技の真髄に気付く事が出来ので、有益な稽古だと思います。そして、この時に「自家薬籠中の物としている感覚」を掴んで欲しいと思います。
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