[NO.6] 肩取り・二教・表

1.ゼロ化技法

逆半身状態で、受けが、肩の付け根辺りを掴んで、掴んだ手で押し込んでくる。

この攻撃をゼロ化するには、二つの技法がある。第一は当て身によるゼロ化であり、第二は、体捌きによるゼロ化である。

<当て身によるゼロ化>

    掴まれ押し込まれている肩とは反対側の掌を軽くグーにして受けの顎下から鼻先に向かって当て身する。合氣道の当て身は、相手方を傷付けてはならないので、相手を打撃してはいけない。しかし、当て身をする側の腕と同じ側の足と腰をしっかりと踏み込んで、自分の丹田と正中線を、攻撃者の前のめりに押してくる正中線に真っ直ぐにぶつけて、相手方を後方に仰け反らせる程度までの当て身をする。

    すると受けは前のめりの攻撃から慌てて、後方に身を仰け反らせて、当て身を避けようとする。このことによって、受けから自分への物理的力は、ゼロになる。それとともに、相手方の丹田正中線の真っ直ぐな安定状態が後ろ斜めに反り返り不安定な状態になっている。

※初心者は、遠慮しがちで、控えめな、しかも丹田と正中線をぶつけない当て身では、相手方の自分に対する攻撃力はゼロにならない。これはダメである。経験者も

ともすると当て身をとりあえずの、おまけ的な恰好だけの行為としか考えていない人が見受けられるが、これも「当て身」が天の理法を体に移す合氣道の三段階技法の中で、最も大切なゼロ化の技法であることを認識していないからであり、改めなければならない。

<体捌きによるゼロ化>

1⃣ 逆半身であるから、受けが掴み押し込んでくる肩と同じ側の足が前に出ている。受

けが押し込んでくると同時に、その場で、丹田と正中線を外側に押されるがままに回

転させ、その正中線の回転に合わせて、前足と後ろ足とを入れ替える。

  2⃣ すると、受けは押し込んでいた物理力を受け止めていた突っかい棒を外されて、腰

   や足が付いて来れずに、押し込んだ腕だけが伸びきって、相手に対する攻撃力がゼロ

になってしまう。それとともに、相手方の丹田正中線の真っ直ぐな安定状態が前に伸

び切って不安定な状態になっている。 

2.崩し技法

<当て身によるゼロ化に続く崩し>

    グーの手を手刀にし、掌を少し上気味に開いて、受けの掴もうとして伸ばしてい

る腕の肩の付け根に、手刀の刃の方を押し当てて、肘の窪みまで、擦りながら切り下げる。するとそれまで後ろに仰け反り、不安定になっていた受けの身体が、今度は、一気に前少し外側方向に引っ張り込まれて、受けの軸はグラグラと揺さぶられて不安定の程度がさらに大きくなる。

    手刀を下向きにして、受けの伸ばしている腕の肘から手の甲の上に、自分の掌を覆うように重ねる。そして、自分の親指を受けの親指の付け根に押し当てて、親指の自由を奪うと同時に同じ手の中指、薬指と小指を、相手方の掌の外側に引っ掛けて、

受けの籠手を腕の内側へ90度の角度にまで折り、自分の添えた掌全体で、受けの籠手を外側に回す(二教の別名を「籠手回し」というのは、同じように籠手に関する関節技として三教の「籠手捻り」と投げ技としての「籠手返し」と区別するためである)。すると、肩の付け根を掴んでいた受けの手指は剥がれる。

    籠手を掴み回している手とは反対の手を筈の形にして、受けの腕の肘関節の少し上部に筈を当てがい、その腕と籠手回し部分とを、クランクのようにして、受けの表の方向に回し、自分の正中線を受けの正中線にぶつける様に、筈の手を同じ側の足腰を、歩み足で進め、次いで、筈をポンプのように押し下げる()。すると受けは、堪らず、もう一本の腕の掌を畳に着き、自立していられない状態となる。身体の安定性が完全に崩れ、崩し段階の完了である。

※ここでの重要なポイントは、受けの腕が、肩=下、肘=中、手首=上の位置になるまで、筈の部分を押し下げることである。

<体捌きによるゼロ化に続く崩し>

  3⃣ 2⃣のゼロ化のために、正中線を外側に回転させたときに、反対の腕がその回転に伴っ

て回転して、ほぼ自動的に、受けの掴んでいる手の甲の上に掌が覆い被さるように動

く。そして、自分の親指を受けの親指の付け根に押し当てて、親指の自由を奪うと同

時に同じ手の中指、薬指と小指を、相手方の掌の外側に引っ掛けて、受けの籠手を腕

の内側へ90度の角度にまで折り、自分の添えた掌全体で、受けの籠手を外側に回す。

これによって、肩を掴んでいた受けの指は外れる。

  4 籠手回しの受けの手の甲を、自分の肩の根元の窪みで抑えながら、同じ側の足腰を前

に進め、自分の正中線を元の方向へ反転させ、受けの正中線にぶつける様に進める。それと同時に、籠手を掴み回している手とは反対の手を筈の形にして、受けの腕の肘関節の少し上部に筈を当てがい、その腕と籠手回し部分とを、クランクのようにして、受けの表の方向に回し、次いで、筈をポンプのように押し下げる()。すると受けは、堪らず、もう一本の腕の掌を畳に着き、自立していられない状態となる。身体の安定性が完全に崩れ、崩し段階の完了である。

※ここでの重要なポイントは、受けの腕が、肩=下、肘=中、手首=上の位置になるまで、筈の部分を押し下げることである。

3.導き技法

ここからは、当て身によるゼロ化・崩しの場合と、体捌きによるゼロ化・崩しの場合とも同じ導き方である。

◆前にある足を受けの背中越しの肩の方向へ、斜め前に進めると受けは腹這いになりそうになる。そこで、反対の足をさっきの足とは90度反対斜め前に踏み出す。すると受けは完全に腹這い状態になる。

◆受けの肩を両膝で挟み込み、籠手回ししている受けの腕を引き上げ籠手回しはそのままに、掴まれていた側の胸に押し当て、掴まれていた側の手刀で、受けの腕の根元を抑え、正中線を中心軸にして受けの頭の方向へ体幹を捩じる。これによって受け、完全に制御し、受けの戦う心を無からしめることが出来る。